頭に入っているから

以前勤めていた病院を退職するときに、娘に「もうこの道を通ることもないかもね」と話しました。娘も院内の保育園に預けていたので、通勤途上で話したのです。すると「うん。大丈夫、頭に入っているから」と娘は答えました。

このブログのネタもEvernoteに書いているのですが、最近何かを自分で記憶しておくことを意識的していなかったようです。

人間の記憶というものはとても優れていて、ある出来事がだんだん薄れていったり、またうまいこと美化したりします。このような出来事の記憶をエピソード記憶と言います。それに対して、物事の内容や言葉の意味は意味記憶、運転の仕方の手順などは手続き的記憶といいます。

娘の言っていた頭に入れたものは、この道を通ったというエピソード記憶でしょう。エピソード記憶は反復することなく記銘(覚えこむこと)することができますが、少しすると保持(覚え続けること)することができなくなることが多いです。つまり忘却するということです。

記憶の一番すごいところは、忘却です。嫌なことを忘れることができる。楽しいことでも忘れます。都合の悪いことを抑圧するといった精神分析の防衛機制のような考え方もありますが、特に理由はなくても忘れると思います。

娘の頭に入ったものも、もう忘れてしまったかもしれません。
忘れるからこそ、次の新しい出来事を覚えることができるのでしょう。

12月 26, 2012

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