アンケートの難しさ

先日、ある教育研究機関から子育ての不安や悩みに関するアンケート(質問紙)の依頼がありました。

内容はフェイス項目といわれる回答者の属性に関する質問、子育ての不安や悩みに関する質問(3件法)、震災後の行動に関する質問(水道水を飲むか、外で遊ぶか、マスクをするかなど)でした。

この場合の3件法というのは、回答の選択肢が「ある」「ややある」「ない」から選ぶもので、あまり一般的には用いられません。3件法が悪いということではなく、スケールに偏りがある点です。通常は5件法で「当てはまる」「やや当てはまる」「どちらともいえない」「あまり当てはまらない」「当てはまらない」などとします。選択肢間の距離を等間隔にすることは困難ですが、なるべく偏らないように作成するべきです。

このアンケートには、反応バイアスとワーディングの問題があります。

反応バイアスとは、回答者の回答に与える影響のことですが、「盲諾反応」や「寛容反応」などが知られています。なんとなく「YES」ばかり回答してしまうことや、社会的に望ましい回答をしてしまうことなどです。この3件法の場合は「中心化傾向」ともいわれるものもあり、スケールの作り方から真ん中の「ややある」に回答しやすくなっています。

次にワーディングとは、質問紙の中で使用する言葉・用語のことです。ワーディングにおいては、専門用語を使用しない、一度に二つのことを訊かない(ダブルバレル)、誘導しないなどが必要とされています。

このアンケートの中では不安と悩みという言葉が使われていますが、通常「不安」は、対象がはっきりしない未来の心配であり、「悩み」は具体的な過去の事象についての苦しみです。そのような用語については整理が必要で、一度に質問してはいけません。

また、一番大きな問題は、子育てに関するアンケートという題でありながら、用紙の半分以上は震災後の不安や行動に関する質問であることです。通常はアンケートの最初に調査の説明(教示といいます)がありますが、今回は震災後の行動に関する質問については一切触れられていませんでした。アンケートの題は「子育てと震災後の行動に関する調査」などとした方が自然です。調査の趣旨とテーマは一致する必要があります。

質問紙調査をする場合は、回答者に負担を強いることを忘れてはいけません。また、得られたデータは非常に大切なものなので、その結果や考察は十分に活用されなければなりません。そのため、なるべく回答者が純粋に回答できるような質問紙の作成を心がけるべきです。

2月 11, 2013

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