マンデリン

マンデリンというコーヒーを買いました。セールだったので買ったのですが、飲みながら以前担当していたAさんのことを思い出しました。

数年前に担当していた方ですが、私とあまり年の変わらない男性で、介護保険の2号被保険者でした。2号被保険者は40歳から64歳が対象ですが、特定疾病(がんや難病など)でないと、要介護認定を受けることはできません。その方は脊髄小脳変性症という病気でした。

脊髄小脳変性症は、小脳や脳幹から脊髄にかけての神経細胞が徐々に壊れていく病気です。歩行障害や振戦(手などの振え)や、尿失禁などの症状が認められるといわれています。進行性の病気です。

Aさんは、徐々に日常生活が困難となる中で、最小限のサービスを利用し、希望する一人暮らしを続けていました。歩行も不安定で転倒するので、遠くの専門の病院へは、私や地域包括支援センターの職員が付き添って通院していました。

しかし、別れて暮らす娘に会う時は、何度も転倒しながら、一人で電車を乗り継いで出掛けていきました。付き添いは断って、外出していたのです。その帰りに買っていたのが、マンデリンというコーヒーです。お気に入りのコーヒー専門店で買うのだそうです。「これがうまいんですよ」と言っておいしそうに飲んでいました。

外出を控えるようにと言っても勝手に出て行ってしまうので、危険なことばかりする、現状認識ができていない、などとAさんの希望を否定的に捉えていました。しばらくしてから、Aさんは当たり前の希望を言っているということに気づき、それを十分に受容できていない自分の力量不足を反省しましたが、その時には異動して担当を変わらなければなりませんでした。

今、私もマンデリンを飲んでいます。おいしいですが、コーヒーのうまさはあまりよくわかりません。でも、続けていると、わかるようになるかもしれませんね。

7月 23, 2013

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