父の方向性 その2
先日、父の今後の方向性を話し合いました。介護認定が切れる時期で認定調査が行われ、その時に親族が集まりました。
父は昨年までは自宅で家族と生活していました。昨年8月頃から認知症の中核症状(記憶障害、失見当など)が出現し、11月からADL(日常生活動作)が低下し、排泄や移動に介護が必要となりました。その後すぐにケアマネジャーを選定し、緊急ショートステイを利用し、有料ホームを探し…、現在の介護老人保健施設に移ったのです。現在、状態が回復して、ほとんど認知症の症状はなく、身体的にも歩行が少しふらつく程度です。
父のニーズは、自宅へ帰ることです。一般的にはニーズですが、社会福祉の分野では、デマンド(要求)といわれることが多いです。
このデマンドは、他のどの家族にも受け入れられません。その理由は、以下のようにまとめられます。
1)現在の状態が良くなったとはいえ、また介護が必要になる可能性がある。
2)今まで迷惑をかけられてきたので、もうこれ以上関わりたくない。
3)もともと一緒に暮らしたくなかった。
色々な家族の形がありますから、家族について良い悪いとは判断できません。一応自分も関わっているわけですが、その理由自体理解できる部分もあります。私の親族は「普通の家族ではない」と表現します。
家族療法を行う立場からすると、「どれが普通の家族かわからない」と言いたいのですが、自分の家族が普通でないということは、なんとなくわかります。
ということで、認定調査の後、老人保健施設の相談室を借りて、親族で話し合うことになりました。
話し合いといっても、親族から父へ上記の受け入れられない理由を伝える場になってしまいました。その理由を伝え、納得させて家に帰りたいと言わせないための時間です。
カウンセリングでは、このようななかなか言いにくい現実を伝えることをコンフロンテーション(confrontation)といいます。コンフロンテーションにはこのような直面化と、対決技法の二種類が知られています。対決技法はアイビィのマイクロカウンセリングの中の一つで、カウンセラーがクライエントの矛盾点を指摘するような方法です。今回は、今まで言いたかったけれどもなかなか言えなかったことを、親族が集合して伝えていますので、直面化に近いようです。直面化はアディクション(嗜癖)分野では多く聞かれる方法です。
本人の要求(デザイア)は良くわかりますが、それを満たすことが本人や家族のためにならないことが明らかですので、私自身の意見としても、自宅に帰らずに施設にいることを勧めました。その代り、私が手続きなどの面倒をみることも約束しました。
約一時間話し合い、今後の方向性がはっきりしました。私の役割も増えましたが、実の父親ですので仕方がないことだと思います。
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