不都合な前提
「ある事実やその実態は、人々が考えたり感じたりする中で作られていくものである」という考え方があります。
このような考え方を社会構成主義といいます(専門外なので、詳しくはよくわかりませんが…)
カウンセリングでも社会構成主義は取り入れられていて、クライエントの言う言葉によって現実が構成していきます。「悩んでいる自分」から「何とかやっている自分」を作り出すような感じです。
構成しやすいクライエントの言葉は、自然に出てくるわけではありませんから、カウンセラーが引き出すことになります。その多くは質問によってなされます。なので、カウンセリングの中で質問はとても大切な技法とされています。
引き出した言葉によって現実を構成していくわけですが、カウンセラーはある現実を構成するための言葉を選んで、その言葉を前提にして話を進めていく必要があります。例えば「優しい母親」「病気療養中であった期間」「教育に熱心な上司」などです。その話を進めていく中で、新たな現実が構成されて、悩みにも変化が起こるということです。
しかし、カウンセリングを行っていると、この言葉の選び方を間違えることがあります。カウンセラーの感覚、未熟さ、体調などいろいろな原因はあるのですが、私も間違えます。間違えると、当然のことながら望ましい現実は構成されず、クライエントは不快な顔をしています。つまり、クライエントにとって都合の悪い前提となってしまうのです。
先日も、私は不都合な前提を作ろうとしてしまい、クライエントは不愉快な様子でした。その前提では、クライエントが家族に対する支援を否定してしまうような内容でした。前提が違っていると気づき、その点について話していると、クライエントは感情的になって自身が持つ恐怖感について話し始めました。「怖がっている母親」が登場したのです。
カウンセラーが言葉の選び方を間違え、クライエントにとって不都合な前提を作ろうとしてしまうことはあります。しかし、そのことによって面接が思いもよらぬ方向に進むこともあります。その方向によって、また別の現実が構成されれば、クライエントの解決につながることもあります。
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